みなさんはImPACTという、コンピューターベースのスポーツ脳震盪評価テストをご存じでしょうか?
アメリカでは、ユース年代からプロまで幅広いスポーツに置いて、スポーツ脳震盪のベースラインの一つとしてプレシーズンに健康診断の一部に組み込まれており、アメリカのスポーツ医学界ではおそらく知らない人はいないテストです。
つい先日、こんなTweetをしました。
数年前までは日本語に対応していなかったので、日本でも使えるようになったら良いなあと思っていました。
投稿後、ありがたいことにImPACTの公式アカウントよりお返事頂きまして、なんと現在では日本語対応しているとのことでした。
最近はスポーツメディシンの役割から離れているので、2年ほど使っておらず、アップデートされていたことも知りませんでした。
今回は、スポーツ脳震盪の評価ツールの一つである、ImPACTについて紹介します。
ImPACTテストとは

ImPACTテストとは、ImPACT APPLICATION INC.という会社が提供している、コンピュータベースのオンラインテストです。
テスト項目としては、視覚 (Vision)・言語記憶(Verval Memory)・反応速度(Reaction Time)・情報処理速度(Processing Spee)などがあり、これらの項目を総合的にテストして、スポーツ脳震盪の評価の一部として使われます。
実際の使い方としては、スポーツシーズンが始まる前のベースラインテスト(Baseline Testing)としての測定と、実際にスポーツ脳震盪と診断された際に、その回復度合いを評価する(Post Injury Testing)のに使われます。
ベースライン測定は、以前の記事でも紹介したSCAT5と合わせて行われることが多いです。テストはオンラインで20分ほどなので、非常に簡単にテストを済ませることができます。
私がアメリカの大学で働いていた時は、パソコン室みたいなところにチームが集まって、20-30人が一斉にテストを受ける、ということもありました。
スポーツ脳震盪における客観的テストの重要性

スポーツ脳震盪によって影響を受ける身体器官や機能(例えば、平衡感覚や眼球運動など)は一つではありません。
スポーツ復帰前に、ImPACTのような客観的なテストがあると、復帰させるドクターやアスレティックトレーナーにとっても、より確信を持って選手を送り出せるのではないでしょうか。
現状、日本においてスポーツ脳震盪から選手を競技復帰させる際には、ドクターによる診断のみに頼るか、もしくはSCAT5を用いた、選手の主観的な回復度に頼らざるを得ない状況がほとんどだと思います。
あくまでも、ImPACTテストも、Neurocognitive; 神経認知の機能を測るテストであり、スポーツ脳震盪によって影響を受ける可能性がある機能を包括的にテストするものではありません。
とはいえ、限られたリソースの中でも、ドクターやアスレティックトレーナーによる観察や、SCAT5、そしてImPACTテストを組み合わせることによって、その評価の精度をより上げることができるのではないでしょうか。
このことは、ひいては選手をより安全に競技復帰されることにつながります。
まとめ
- ImPACTというNeurocognitive Testing (神経認知テスト)が、アメリカスポーツ医学界では広く重宝されている。
- 現在は日本語対応している(Version 4)
- ドクターによる問診、SCAT5、そしてImPACTを組み合わせることによって、より客観的に選手を復帰させることができる。
日本におけるスポーツ脳震盪のマネジメントは、正直なところかなり遅れをとっていると思います。
今回紹介したImPACTテストは、もちろん有料ですし、多くのチームで導入が難しいかもしれませんが、SCAT5は無料ですし、ドクターはもちろんアスレティクトレーナーも確実に使えるようにしておきたいツールです。
地道ではありますが、いちアスレティクトレーナーとして、今後もスポーツ脳震盪に関する啓蒙活動を続けていきたいなと思います。
Akira
Reference
Herring, S., Kibler, W. B., Putukian, M., Solomon, G. S., Boyajian-O’Neill, L., Dec, K. L., Franks, R. R., Indelicato, P. A., LaBella, C. R., Leddy, J. J., Matuszak, J., McDonough, E. B., O’Connor, F., & Sutton, K. M. (2021). Selected issues in sport-related concussion (SRC|mild traumatic brain injury) for the team physician: A consensus statement. British Journal of Sports Medicine, 55(22), 1251–1261. https://doi.org/10.1136/bjsports-2021-104235