ハムストリングの怪我が起こる原因。
例えば、ハムストリングの肉離れをした選手がいた時、みなさんはその原因をどのように考えるでしょうか。
単純にハムストリングが硬かったからでしょうか?
ハムストリングの筋力が悪かったからでしょうか?
はたまた、股関節屈筋群(Hip Flexors) が硬く、骨盤が過度に前傾しているために、ハムストリングに過度な伸長ストレスがかかっていたからでしょうか?
どれも一要因ではあるかもしれませんが、スポーツで起こる大半の怪我は複数の要因が相まって起こることがほとんどです。
怪我をした選手は、もしかしたら単純にトレーニングのやり過ぎで、身体的に過負荷だったのかもしれません(over loadの問題)。
食事生活が不規則で、トレーニングによって破壊された筋繊維を修復するだけの十分なタンパク質が取れていなかったかもしれません(栄養の問題)
実は、トレーニングの偏りで、自身のスプリントスピードで練習中にあまり距離を蓄積できていなかったのが、突然試合になって沢山スプリントをしなければならない状況に遭い、身体が急激な負荷に耐えられなかったかもしれません(under loadの問題)
このように、怪我の原因には単純に身体が硬いなどの内的要因だけではなく、トレーニング負荷などの外的要因も含め、様々な要因が存在しています。
この両方から成る複合的な要因を踏まえた上で怪我の要因を絞り出すと、多面的にリスクに対してより精度の高いアクションを起こすことが出来ると私は考えています。
Multifactorial Individualized Program for hamstring injury reduction
Lahti et al. (2020)は、ハムストリング肉離れに起因する複数の身体的な内的要因をあげ、それぞれの要因をテストによって抽出し、それに応じて各リスクファクターによる怪我のリスクを減らすための個別のプログラムをフレームワークとして提唱しています。
彼らが提唱するハムストリング肉離れの要因は以下の通りです。
- Lumbo-Pelvic Control (LPC); 腰椎骨盤部のコントロール
- ROM; 可動域
- Posterior Chain Strength (PCS); 下肢後面筋力
- Sprint Mechanical Output (Maximum horizontal force); スプリントの機械的出力
可動域(例えばFMSのActive Straight Leg Raiseなど)や筋力(例えばNordic Hamstringなど)は広く知られて、実践されている項目ではないでしょうか。
一方で、Lumbo-Pelvic Controlはコンセプトは理解できても評価が難しいし、Horizontal ForceについてはFV Profilingが発展してきて、ここ最近研究が進んできた項目ではないでしょうか?(知らなかっただけであればすみません。。。)
個人的にはLPCが大事なのは理解していましたが評価方法がいまいち分からず、特にスクリーニングもやれていませんでした。
しかしながら、それを評価する一テストであるKick Back Scoreなんかはすごく面白いなと思いました。

“静的な”可動域を測るよりもより”動的な”可動域/柔軟性を測ったほうが実用的だし、測定も写真を撮るだけなので、すごくシンプルで良いなと個人的に思います。
加えて、GPSの発達で、Horizontal Forceを測ることも割と簡単にできるようになりましたし、GPSをつけて走らせるだけなのでスクリーニングとしても非常に簡易的でこちらも現場での応用が効くのではないと思っています。
最後に、可動域の話に戻りますが、Jurdan TestなんかはASLRよりももう少し機能的な評価のように思いますし、筆者らがASLRの左右差を評価するというのもやったことがなかったので面白いなと思いました。

最終的にはそれぞれの現場にあるリソースで限られた時間の中でテストを行うわけで、必ずしもこのフレームワーク通りにやるのは難しいと思います。
ただ、多方面からハムストリングの肉離れ要因をとらえ、より広い視野でそれぞれのリスクファクターを分析していくためには非常に役立つ内容ではないかと思いました。
Deceleration as Vaccine
ここ一年程、方向転換((multi-directional change of direction)に興味をもって、その分野のトップランナーをTwitterでフォローしているのですが、その人の面白いブログ記事に出会いました。
その記事では、Lahtiらのプログラムでは提唱していないDeceleration Reserveという考え方が説明されています。
個人的にはハムストリング肉離れの予防として、ハイスピードランニングに重きを置いていたのですが、当記事の筆者は減速によるハムストリングへの刺激もその怪我を予防する”ワクチン”になるとしています。
今までそのように考えたことはなかったのですが、すごく興味深い視点だと思いしました。
この分野に関する研究も今後どんどん進んでいくのではないでしょうか。
こちらについてはまた記事が一つ書けてしまうので、またいつか触れられたらと思います。
まとめ
- ハムストリング肉離れの内的要因は大きく分けて四つに分類される
- ハイスピードランニングだけではなく、減速もハムストリング肉離れ予防の”ワクチン”になる
新しい一年が始まり、忙しくしていますが、今年も充実した年になるように一日一日を大切に行きたいと思います。
今年はできる限り多くの人とつながる一年にしよう、というのが大きな目標です。
良いご縁が沢山ありますように。笑
Akira
Reference
Lahti, J., Mendiguchia, J., Ahtiainen, J., Anula, L., Kononen, T., Kujala, M., Matinlauri, A., Peltonen, V., Thibault, M., Toivonen, R.-M., Edouard, P., & Morin, J. B. (2020). Multifactorial individualised programme for hamstring muscle injury risk reduction in professional football: Protocol for a prospective cohort study. BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 6(1), e000758. https://doi.org/10.1136/bmjsem-2020-000758
「スポーツで頻発するハムストリングの肉離れ:受傷リスクを抑えるための包括的フレームワーク」への1件のフィードバック