アイソメトリックトレーニング、と聞くとどのようなトレーニングを思い浮かべるでしょうか?
元々、米国大学院でアスレティックトレーニングを学び、大学スポーツやプロサッカーチームのSports Medicineの部署の中でアスレティックトレーナーとして働いていた私ですが、その当時のアイソメトリックトレーニングのイメージはトリートメントテーブル上でのQuad Set。
リハビリの初期の初期にやるかなり低強度なエクササイズとしてのイメージしかありませんでした。
近年改めて?注目されているアイソメトリックトレーニング

長らくアイソメトリックトレーニングを活用し続けてきた方々にとっては「昔からずっとあったもので新しいものでもなんでもない」と言われてしまうかもしれません。
私自身は、ここ数年でアイソメトリックトレーニングの奥深さやその汎用性に惹かれ、徐々にその活用を広げてきた一人です。
そのきっかけになったのは、Alex NateraによるSportsmithのIsometric Strength Courseでした(プロモーションみたいになってますが一銭ももらってません。笑)。
そのコースを取り始めたあたりからさまざまなブログや論文を読み漁り、その魅力に惹かれていったのを覚えています。
現在、ヨーロッパ各国でプレシーズンが始まっていますが、各チームの活動の中にスクリーニングの目的でさまざまなアイソメトリックテストが実施されているの垣間見ることができます。
ざっと並べましたが、ここに挙げただけでも多くの種類のアイソメトリック種類があることがわかっていただけると思います。
アイソメトリックトレーニングの最大のメリットはその安全性と”低コスト”

アイソメトリックトレーニングの魅力はなんといってもその安全性です。
通常、下肢のジェネラルな最大筋力を鍛えたい場合、スクワットやデッドリフトで非常に高負荷を扱わなければなりません。
当然、Low Volume (少ないセット、レップ数)で行えば、そのダメージを抑えることはできますが、高重量を扱うことで特にトレーニング歴の浅い選手にとっては腰を痛めたり怪我のリスクを伴うことになります。
よくあるケースは筋力が低く、筋力を上げるためにトレーニングさせたいけどそもそもトレーニング歴も浅く、高重量を扱えるようになるまでにも時間がかかる選手。
また、錘を使うと身体が重くなって動きが悪くなるから思い錘を持ちたくないという選手(タイプしながら頭を抱える筆者。笑)。
このようなケースにアイソメトリックトレーニングは非常に有用だと感じています。というのも、アイソメトリックトレーニングは錘をつけたバーベルの軌道をコントロールする必要がありません。
最も、スクワットやデッドリフトなどConventionalなリフトもできるように育成年代から鍛えてあげるのが本質的ではあると思いますが。。。
根本的な課題は一旦目を瞑るとして(笑)、「痒いところに手が届く」ようなのがアイソメトリックトレーニングだと感じています。
さらに筋肉や腱が基本的にはIsometric=長さが変わらない/伸び縮みしません。
筋力トレーニングを避ける傾向にある選手がよく口にする「筋肉痛 (DOMS)」を起こす可能性が非常に少ない点も、アイソメトリックトレーニングの大きなアドバンテージです。
最大筋力だけでなく、やり方によっては筋肥大を促したり、腱を強くしたり、力の立ち上がり (RFD)を向上させたり、非常に多岐にわたる応用が可能です。
これら安全性と筋肉痛を引き起こしにくいその”低コスト”さによって、アイソメトリックトレーニングはたとえ何試合も続く連戦スケジュールにおいても実施可能で、非常に有用な「武器」だと考えています。
また、実施者のIntent (力を出す意識・意図)によってトレーニングの強度が容易に調整が可能です。
さらに、限られた関節角度での実施も可能であり、その点においてリハビリの初期段階から導入可能なトレーニングとしても非常に価値のあるものと言われています。
もちろん筋力の向上が、トレーニング時の関節角度 (Knee at 30° vs at 90°)や及び筋長 (Short Muscle Length; SML vs Long Muscle Length; LML)によって影響を受けたり(Oranchuk et al., 2019)、考慮・懸念すべき点が全くないトレーニング様式ではありません(そもそもそんな完璧な様式はないですが。。。)。
しかしながら、それを加味しても非常に使い勝手の良いトレーニングとして日々活用しています。
まとめ
- アイソメトリックトレーニング最大のメリットは安全性と「低コスト」。
- 従来の高重量を扱うストレングストレーニングと比較すると、怪我のリスクが低く、筋肉痛(DOMS)も起こりにくく、連戦スケジュールでも取り入れやすい。
- 実施者の「Intent(意識・意図)」によって強度が調整でき、限られた関節角度での実施も可能なため、リハビリの初期段階から導入できる。
ここ数年自分自身でも、主に筋力を向上させるためのアイソメトリックトレーニングを続けていますが、パワー系のリフトやプライオメトリックなどと組み合わせても非常に相性の良い手法だと体感しています。
一口にアイソメトリックと言っても、目的によって多くの様式があります。
次回以降、アイソメトリックトレーニングの種類や目的別の使用法について、その詳細を解説できたらと思っています。
それにしてもあっという間に梅雨が終わり、夏が来ましたね。
外が暑すぎて、日中は娘を外に連れ出すことも躊躇われます。子どもたちの将来が心配です。
地球環境のために、子どもたちの未来のために、自分ができることをやっていかなければならないと感じる毎日です。
Akira
Reference
Oranchuk, D. J., Storey, A. G., Nelson, A. R., & Cronin, J. B. (2019). Isometric training and long-term adaptations: Effects of muscle length, intensity, and intent: A systematic review. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 29(4), 484–503. https://doi.org/10.1111/sms.13375
「Quad Setだけじゃない、アイソメトリックトレーニングの奥深さ。その汎用性、実用性について。」への1件のフィードバック