前回のブログでは、HIITのプランニングする上で重要なターゲットとなる三要素(有酸素、無酸素、神経筋)と、それらの組み合わせからなる6つのHIITタイプについて簡潔に紹介しました。
今回から複数回に分けて、6つのHIITタイプそれぞれに応用が効くHIITの様式 (HIIT Format)を、具体的なエクササイズも含めて更に詳細に紹介していきたいと思います。
ちなみにそれぞれのHIITフォーマットはHIIT ScienceではWeapon=武器と呼ばれています。
フィットネスにおいて、同じ身体的な反応をターゲットとしても、その反応を引き出す方法は色々あり、その各方法をHIIT ScienceではWeaponと呼んでいます。
選手のフィットネスを向上させるための”武器”を多く身につける、という意味で彼らが提唱するフレームワークは非常に有効なものです。
HIITフォーマット及びHIITに用いられる武器の種類 (Weapon)

以下が、HIITフォーマット=Weaponの一覧になります。
- Long Intervals ロングインターバル
- Short Intervals ショートインターバル
- Repeated Sprint Training 反復スプリントトレーニング (今まで繰り返し、と呼んでいましたが反復、と訳した方がしっくりくることに気がつきました。笑)
- Sprint Interval Training (SIT) スプリントインターバルトレーニング
- Game-Based HIIT (GBHIIT) ゲームベースHIIT
これら五つがHIITフォーマットのWeapon=武器と呼ばれるものであり、これら五つの武器を駆使してHIITセッションを組み立てるということになります。
ロングインターバルと運動強度 (Intensity)

一つ目のHIIT Weaponはロングインターバル (Long Intervals; HIIT Long)です。
最大有酸素スピード近くでのランニング様式で、一般的には2-5分の間で運動 (Work Duration)を行うものがLong Intervalsに該当します。
最大有酸素スピードはMaximal Aerobic Speed; MASと英語では呼ばれますが、他にやvVO2 max (Velocity at VO2max)と表現されたりもします。
本記事では詳しい説明は省きますが、文字通り酸素摂取量がピークに達するランニングスピードがMASやvVO2max (本著ではv/pVO2maxと記載)になります。
仕事でお世話になることのあるS&C CooporationさんがMASについて、わかりやすく解説してくれている記事がありましたので、MASについてもう少し詳しく知りたい方こちらの記事をご覧いただけると良いかと思います。
また、岡崎慎司がオーナー?として有名なドイツのバサラマインツで指導をしている方が解説をしているブログ記事もあったのでそちらも参考にしてみてください(日本語資料は貴重)。
当二記事で紹介されている30-15IFTというMASを図るためのフィットネステストは、HIIT ScienceのMartin Buchheitが開発したものであり、HIIT Scienceの本の中でも紹介がされています。
そのテスト結果を元に、各個人のMASに対して強度を調整することで、様々なタイプのHIIITを個々人に合わせて処方することができる、という仕組みになっているわけです。
例えばMASが時速20キロだとすると、その数値の〜%をロングインターバルのランニングスピードに設定し、運動を行うことになります。
例えば、強度を90%に設定したい場合、時速18キロがそのエクササイズの強度設定になるということです。
一方でMASが時速18キロの選手の場合、90%の強度設定だと時速16.2キロとなり、前述の選手よりもスピードは遅くなりますが、当選手にとってはより適切な強度設定となるわけです。
また、STATSportsはMASを計測するテストとして5分間走を紹介しています。
テストとしては非常にシンプルで、5分間でできるだけ長い距離を走るというもの。テストのセットアップも非常にシンプルで済みそうです。
テストごに、GPSデータを切り取り、5分間走の平均速度を算出したものがMASとなるとのことです。
テスト自体は非常にシンプルで、GPSがあれば計測ができるのでGPSを導入しているチームにとっては有用なテストとなりそうです。
ロングインターバルとその運動時間 (Work Duration)
Long IntervalsはHIITタイプ3 (有酸素+無酸素)及びHIIT タイプ4(有酸素+無酸素+神経筋)の”武器”として応用することができます。
上記の動画はType 3のロングインターバルとして紹介されています。
実際に何分漕いでいるかはわかりませんが、神経筋への刺激が比較的小さく(Low Neuromucular Strain)、一方で代謝系のストレスが大きくかかった(有酸素+無酸素)エクササイズであることがわかります(レップの終わりに選手も「あぁー!」と叫んでいますね。見てるだけで心拍数が上がってきます。笑)。
こちらはType 4のロングインターバルとして紹介されている、トレッドミル上でのランニングです。
こちらも実際に何分走っているかはわかりませんが、ハイスピードランニングにかかるスピード(一般的には時速19.8-21km以上と定義されています)で走っていそうです。
例えば一キロを3分で走るとすると(長距離選手でないと無理だとは思いますが。。。)、時速20kmなので大体ハイスピードランニングにかかるスピードになります。
Type 4の定義通り、有酸素、無酸素代謝への刺激はもちろん、ハイスピードランニングを行っているので神経筋へのストレスもかかっていることがわかります。こちらも身体的にはもちろん、メンタル的にも「キツい」トレーニングになります。
以上の動画からもわかるように、有酸素だけでなく、無酸素代謝にも頼った運動になるので、割ときつめのコンディショニングをイメージしていただけるとわかりやすいと思います。
ロングインターバルは80%-90%程度の最大有酸素スピードでランニングを行うことが推奨されています。
こちらの映像はサッカープレミアリーグのボーンマスが行っている1600m走テストの映像になります。
映像での声掛けなどからの予想ではありますが、400mx4のランニングテストを行っているようです。
当然、選手によってスピードはバラバラですが、5分16秒でランを終えている選手がいました。
計算すると1600m/316s≒秒速5mで、時速に直すと18キロペースのランニングということになります。
テストの形式上ほぼオールアウトのランニングのようだったので、これよりも10-15%ペースを落とした速度で速度設定をすることで、同じ様式400mx4のロングインターバルを処方することが可能だと思います。
この映像を通じてなんとなくロングインターバルのイメージを掴んでもらえるのではないでしょうか。
ロングインターバル (HIIT Long)とそのボリューム
ボリューム=トレニング時間に関しては12-30分が一般的のようです。例えば2分走x6セット(12分トータル)や4分走x5セット(20分トータル)など。
セット数は、例えば長距離選手のトレーニングであれば多くなるでしょうし、逆に球技種目でトレーニング合間や最後に補足的にランニングのコンディショニングを行うのであれば、ボリュームは少なると思います。
大体このボリュームで90% VO2maxであれば10分程度、95% VO2maxで4-10分間の運動が確保されるとHIIT Scienceでは示されています。
運動時間が短いほど有酸素系代謝が優位で、逆に長くなるほど血中乳酸濃度が高くなり解糖系のエネルギー生産が優位になるため、トレーニング処方次第でどちらにメインを置くのか調整することが可能です。
一方で、インターバルが長くなってもランニングスピードも遅くすると (例えば19キロから17.5キロなど)、血中乳酸の蓄積は低くなるということです。
とはいえ、ロングインターバル全体として無酸素解糖系によるエネルギー生産と乳酸の蓄積は他のHIITフォーマットと比べても高いため(>10mmol/L)、解糖系の代謝を抑えたい場合には違う”武器”を選択したほうが良いとされています。
そう考えると、有酸素能力の回復/維持をメインに置くリハビリの初期なんかは、ロングインターバルは避けたほうが良いのかもしれません。
ロングインターバルとそのリカバリーインターバル
リカバリー時間に関してはパッシブリカバリー(その場で休んだり、ゆっくり歩いたり)が2-3分(2分が理想的とのこと)、アクティブリカバリー(ジョギングやゆっくりとバイクのペダルを漕ぎ続ける)であれば3-4分が推奨されています。
ちなみにアクティブリカバリーのスピードは、30-15 Intermittent Fitness Test (30-15 IFT)から算出されたスピードである、VIFTの45%程度とされています。
それぞれ個人のVIFTというのは実際にテストをしてみないとわからないのですが、Science for Sportsというサイトがまとめてくれている男子アスリートの値は次の通りです。

例えば高校生 (High School)だと時速16kmほどなので16×0.45=時速7.2knほどが適切なアクティブリカバリーのスピードということになりなります。
このスピードは、例えば陸上の400mトラックを3分20秒かけて走るスピードになります。4-6分くらいのインターバル走を行うのであれば大体ちょうど良いアクティブリカバリーになりそうです。
逆に2分ほどの短いインターバルであれば、陸上トラック半周を1分40秒程度で走る丁度良いリカバリーになる、ということです。
尚、アクティブリカバリーを行うと血中の乳酸がエネルギーの再生産として使われるため、パッシブリカバリーと比較してトータルの乳酸の蓄積が低くなると言われています。
もちろん有酸素メインに行うのか、無酸素の解糖系にストレスをかけるかでまたリカバリー時間やアクティブリカバリーのスピードは調整可能が必要になります。
いまだに疲労物質として勘違いされやすい乳酸ですが、乳酸について非常にわかりやすく解説されているTweet(Xか。。。いまだに慣れませんが。。。)があったのでシェアします。是非ご一読ください。
ロングインターバルの実際
個人的にサッカーにおいてよく使用するロングインターバルを二種類紹介します。
まずはシンプルにグラウンドを外周する4分走。レストは大体2分間で取ることが多いですが、有酸素寄りの強度であれば90秒にしたりします。
仮にグラウンドを三周すると仮定すると(四角は少し切る)、大体3分半から4分程度で走るとちょうど狙いとする最大有酸素スピードの強度になると思います。
この手のロングインターバルはプレシーズンの初めに行うことがほとんどです。シーズン中に単純なランニング様式のロングインターバルをさせるということはあまりありません。
個人的にはロングインターバルはリコンディショニングでの活用の方が幅が広いと考えています。
また、ロングインターバルはバイクエクササイズでも応用可能です。ランニング様式と同じ運動時間で、レストをアクティブリカバリーにすると良いかと思います。
次により、競技特異的な様式ですが、マンチェスターシティーが非常に参考になるエクササイズを動画にて出してくれていたのでそちらを紹介します。
以下簡単なエクササイズのオーガナイズです。
- サーキットパート
- ドリブルサーキット (Technical)
- 方向転換サーキット (Physical – Change of Direction)
- テクニカルサーキット (Technical – Pass and Move with Header movement)
- 1vs1 サーキット (Physical – Contact/ Technical – Ball Keep)
- ランニングパート(L字ラン)
Continuousな単調なランニング(外周系ラン)だけではなく、このようにフィジカルとテクニカルな要素を混ぜたサーキット形式に、ランニングを合わせるというのは特にサッカーにおいてよく見られる様式です。
考え方によってはショートインターバルと見ることもできますが個人的にはロングインターバル特にType 4のHIITと位置付けるかなという印象です。
細かな設定は予測でしかないですが、前述の通り、四角形のオーガナイズで、四角にそれそれサーキットステーションがあり、そこで一定時間運動を行なった後にL字のランニングを行っています。
例えば、サーキットを30秒、ランニングを15秒とすると約45秒のインターバルになります。これを4回(一回毎にトランジションの時間を10秒ほどつけるとして)繰り返すとすると、大体ロングインターバルに収まる3-4分ほどの運動時間になります。
L字ランを行うと二つのステーションをローテーションすることになるので、二セット目はまだ実施していないステーションからスタートすればちょうど全てのステーションをカバーすることになります。
この手のサーキットはランニングの時間やスピードを変えたり、サーキット部分の強度を変えたりすることで、代謝的なストレスに変化をつけられる非常に汎用性の高いHIITフォーマットだと思います。
まとめ
- ロングインターバルの運動時間は2-5分ほど
- 運動強度は最大有酸素スピードの90-100%ほど
- リカバリーはパッシブであれば2-3分程度、アクティブであれば3-4分程度(運動時間による)
- トータルの運動ボリュームは12-30分が一般的
- ランベースやバイクはもちろん、競技特異的なサーキットを混ぜることも可能
中長距離ランナーはシーズンを通して使える様式だと思いますが、球技系ではオフシーズンやプレシーズンに利用用途が多い形式かなと思います。
サーキット形式を用いるとバリエーションはいく通りもあるので非常に使いやすいフォーマットではないでしょうか。
ロングインターバルの説明だけでもかなり長くなってしまいました。日本語の情報がまだまだ少ないので頑張って書きました。笑
相変わらずまとめ方が下手ですが、上手くなるにはとにかく書くしかないと思うので継続します。笑
少しでもお役に立てれば幸いです。
Akira
Reference
Carroll, C. (2019, March 20). Maximal Aerobic Speed: A Useful Tool To Improve Aerobic Capacity? STATSports. https://pro.statsports.com/maximal-aerobic-speed-a-useful-tool-to-improve-aerobic-capacity/
Laursen, P., & Buchheit, M. (2019). Using HIIIT Weapons. Science and application of high-intensity interval training. (pp.73-84). Human Kinetics. https://lccn.loc.gov/2018030511
Walker, O. (2016, August 6). 30-15 Intermittent Fitness Test. Science for Sport. https://www.scienceforsport.com/30-15-intermittent-fitness-test/